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厨房内の話 la storia nella cucina

厨房はみんなで10人+1人。
シェフのパオロ Paolo、セコンドのミケーレ Michele
他にトマス Tomas、ニグ Nigu(本名はニコーラ Nicola)、ロリス Loris、タニア Tania、
マッティア Mattia、ルーカス Lukasz、別のパオロ Paoloと魚を捌くおじさん。
この人の名前がややこしくて、いまだに覚えられない・・・
店の入り口に顔写真が張ってあり、そこに名前と担当職(?)が書いてありますが、
シェフとミケーレ以外は適当。

名前をわざわざここで公表することも無いのですが、備忘録として書きました・・・はい。

日本のようにあだ名で呼んだり肩書きで呼んだり(例えば課長!とか)はしないで、
全て名前で呼び合います。
ただ、ニグのような通称で呼ぶことは良くあって、
トマスはトミー、マッティアはマッティのように言うこともあります。
また、忙しくなってきたり、遠くにいるときに呼ぶ呼び方も。
パオロなら「パ!」、ミケーレは「ミィ!」など。
最初聞いたときは、何のことなのか全く理解できませんでした。

そしてここの職場は全部で3人のパオロが居るので、どう呼び分けするんだろうと思っていたのですが、
そんな面倒なことはしていないです。さすがイタリアというべきなのか?

ちなみに私は masa と呼ばれていますが、
シェフ以下数人にはマッシ massi と呼ばれています。
というのもシェフが、
「masaか・・・イタリア的に言えばmassimoマッシモだな、その方が呼びやすい」
と言ったことによります。
ただ、このmassimo。一般的な名前でもありますが、
最大の・非常に大きい、などの意味もあります。
何かの会話で「・・・massino・・・」などと聞こえると、ついつい返事をして、
「いや、masaのことじゃないよ」とたまに笑いながら言われます。


厨房内ではみんな、仕事をしながらわいわい話してたり、歌を歌っていたり。
水を入れておいたのに、いつのまにか酢が入っていたり、
ニョッキが飛び交っていたり(!)と、何かと楽しい職場です。

夜は平日でも70人、週末だと120人以上は来客があるお店。
忙しくてもピリピリすることなく・・・ま、多少はありますが・・・陽気に仕事をしています。
そんな時は、誰彼ともなくちょっかいを出したり話しかけたりして、緊張を和らげています。
ちょっと日本の職場では考えられないかな・・・
ドラマや漫画なんかでは、厨房の場面は結構ピリピリと描かれてますから。

仕事に対する姿勢が違うのでしょうけれど。
こちらでは「仕事は楽しく」。楽しくなくちゃ意味が無い。そして誇りも。
だから忙しくてもそれを楽しめるし、
自分が美味い料理を作るからお客が沢山来るんだ、という誇りがある。

先週・今週ともに土日は予約で満席だったのですが、
夜の仕事に取り掛かる前にシェフが「ragazzi, buon lavoro!」と声をかけます。
みんな、いい仕事を!と言った感じでしょうか。
日本だったら、多分「みんな、がんばろう!」と声をかけるのでしょう。
でもこれをイタリア語にするなら、「ragazzi, forza!」。
楽しさが感じられない言葉になってしまします。

そう、仕事はがんばるものじゃないんです。
この姿勢は是非見習いたいところです。


こちらでははっきりとした役割分担みたいなものがあって、
基本的には自分の仕事以外は動きません。
例えばシェフが忙しく動いてても、自分の仕事で無ければ話に興じています。
シェフから「手伝って!」と言われて初めて鍋に手を出す、といった感じ。
悪く解釈すれば自分の給料以上の仕事はしないってこと、
良く言えば他人の仕事(楽しみ)を奪っちゃいけないってことなのかな、と最近は思っています。
にしても・・・
日本人としては、黙って立っているよりも、ついついせかせか動いちゃうんですけれど。

先日もカメリエーレ(給仕係)がワインの箱をいくつも抱えて運んでいたので手伝ってあげたら、
「それは彼らの仕事だから手伝わなくてもいいんだ」と言われました。
「うーん、でも沢山箱があるし・・・」と言いかけたら、
「どんなに厨房が忙しくても、彼らは料理を手伝わないだろう?それと同じだ」と。
ま、確かに一理ある言葉でした。


日本では、一般の会社でもそうですが、位が上になるほど先に帰りませんか?
部長あたりだと定時になるとそそくさと帰るし、そもそも「重役出勤」なんて言葉さえあります。

こちらでは真逆で、上の人ほど働きます(少なくとも当店では)。
みんなは、自分の仕事が終わって掃除をしたら帰りますが、
シェフは明日の仕込みの準備や、メニューの段取り、在庫の確認をしてから帰ります。
また、週末は誰よりも早く来て仕事をしています。
沢山の給料を貰っているのでしょうけれど、これもまた、日本では到底考えられないこと。


早口なので何を言っているのか分かりませんが、
厨房内でたまに言い争いをしていることがあります。
良くあるのはシェフとカメリエーレとの間でのやりとり。
お互い激しく言い争っていても、その後は意外とあっさり。笑いあったりしてます。

これも日本ではまず見ないかなぁー。
怒ったっきりムスっとなってしゃべらなくなるとか、その後の応対が投げやりだったりとか。
もしかしたら、こちらでは言い争い自体が、良いストレスの発散なのかも知れませんけど。

それに、シェフと下の人とでも言い争いをします。
上の人に楯突くイタリア人。日本だったら左遷かクビでしょうか?(笑
言い争いに加わる気は更々ありませんが、何を言っているのかくらいは知りたいなぁといつも思います。
「家政婦は見た」の心境ですね。


いつもすごいなあと思うのは、遠くに居ても話に参加すること。
つまり、遠くに居ても話を聞いている(聞こえている)んです。
そしてそれは、仮に自分がしゃべっていても同じ。
自分が誰かとしゃべっていて、遠くで例えばシェフが「鯛はどこにあるんだ?」と言うと、
今までしゃべっていたにもかかわず、「冷蔵庫の右奥!」などとシェフに伝えます。
なんでしょう、方耳は相手との会話、もう片方は外の音を拾っているとしか思えないです。

聖徳太子は10人の話を同時に聞き分けられた、という言い伝えがありますが、
多分、イタリア人なら出来るのかも知れないと思わずに居られません。
by frutta_di_mare | 2008-07-29 00:12 | イタリア・ヌマーナ
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